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「学校文集 『大空』第63号」 ―文章読本―
今年度も文集『大空』が発行されました。小学校68年の歴史の中で、第63号という歴史のある全校児童の文集です。子ども達は2学期の後半から作文にとりかかりましたが、学年によって、テーマが決められています。
1年生が「見つけたよ」で自分が知らせたいことを書いています。2年生は「生きもののことをせつ明しよう」で、すきな生きものについてしらべ、エピソードを添えました。3年生は「ある日の出来事」で身近な出来事を題材に、様子や気持ちが伝わるように書いています。4年生は「十才の区切りをむかえて」で、これまでの自分、これからの自分について書きました。5年生は「今,気になっている問題」で、自分が今一番気になっている問題について、自分の意見をまとめました。6年生は「二つの考え」で、身近な事柄について、相反する考えを比較しながら、自分の考えをまとめています。
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さて、この『大空』の巻頭に私の拙文を載せています。横書きにして転載しましたので、ご覧いただければと思います。
文章読本(ぶんしょうどくほん) ~おうちの人といっしょによんでください~
トキワ松学園小学校校長 栗林 明弘
文章には大きく分けて、文学的文章と説明的文章の二つがあります。文学的文章とは、読む人の感動をめざすために書かれる文章、説明的文章というのは読む人の理解をめざすために書かれる文章と言っていいでしょう。この『大空』も第63号となりました。今回の63号では、3・4年生が文学的文章、1・2年と5・6年が説明的文章と分けることができるでしょうか。いずれの文章にしても、みなさんひとり一人の“息遣い”が感じられることが大事です。言いかえれば、大事なことは、自分にしか書けない文章を書こうとする姿勢が感じられるかどうかと言うことです。
映画監督の五所平之助という人は、俳句も作る人でしたが、俳句の三原則としてこんなことを言っています。「俳句は美しくなければならない」「俳句は見えなければならない(様子がはっきりとわかること)」「俳句は平明でなければならない(わかりやすいこと)」と。実は、俳句も文学的文章ですから、文章にもこの原則は当てはまるかもしれません。文学的文章を書く時には、この三原則を大事にしてよい文章を書きたいものですね。また、説明的文章だからと言って、この三原則が無関係というわけではないでしょう。読む人を静かに感動させる息遣いがあってこそ、説明の理解が深まるというものです。
さて、では、どうしたらよい文章が書けるのでしょうか。この問題は多くの人が昔から関心を持っていましたが、それに応えるかのように書かれたものに『文章読本』というものがあります。これは、文章の達人が文章の書き方や読み方を分かりやすく記したもので、谷崎潤一郎という作家や川端康成、三島由紀夫、丸谷才一という作家のものが有名です。どんなことが書かれているのかとても気になりますね。一つだけ、有名なものを紹介しますと、こんなことが書いてあります。
<名文を読め。作文の極意はただ名文に接し、名文に親しむこと、それに盡きる。>
名文とはすぐれた文章や有名な文章を言います。例えば、昔から読み継がれている本、昔の有名な文章です。また、名文は、読んで自分自身がこの文章はいい文章だなと感心すれば、自分自身の名文になるとも言っています。私は教科書にのっている文章でもいいですし、トキワ松の必読図書でもいいと思います。とにかく、名文と思われるものをただ、読めばいいのです。大切なのは、広い範囲にわたってたくさんの本を読み、たくさんの、自分自身の名文を発見してそれに親しむことなのです。感心する文章は、心の底に貯えられ、文章を書くときに必ず役に立ちます。ですから、どうぞ、いろいろな本から名文を見つけてほしいと思います。名文を声に出して読むこともいいですね。
『古今和歌集』という歌集はまだ、知らない人が多いと思いますが、令和という元号が採られた『万葉集』の次に出された歌集です。お正月に行う百人一首の歌もこの中から採られているものがあります。この『古今和歌集』の初めに、和歌は力も入れないで天地を動かし、目に見えない鬼神(鬼)ですらしみじみと感動させ、男女の仲も和らげ、勇ましい武士の心でも慰める力があるというのですが、作文においてもおそらく同じだと思います。みなさんの書く文章にも、天地を動かすような、鬼さえも感動させるような、人の仲をよくさせるような、人の心を慰めるような力がきっとあります。
どうぞ、これからも、そんな文章を書くつもりで頑張ってほしいと思います。 (令和元年十二月)
TEL 03-3713-8161(代) FAX 03-3713-8400