- トップページ >
- スペシャル授業
令和元年度卒業式式辞
3月14日、在校生の不参加など規模と時間を縮小する中で行われた本校の卒業式でしたが、41人が無事巣立っていきました。全員マスクをつけての式となりましたが、厳粛な中にも温かみのある本校ならではの式となったと思います。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
以下、式の中での私の式辞を載せます。式辞はいつも式辞用の巻紙にペンで書いたものを、卒業生の顔を見ながら読み上げます。少し難しい部分もあるかもしれませんが、私が今改めて思う大切なことを、はなむけの言葉として送りました。
卒業式式辞
令和2年3月14日
校長 栗林 明弘
校庭の三本の桜の蕾も膨らみ始め、そのうちの1本が昨日から花をつけています。また、1年生の花壇の前には黄水仙の花が幸せの色を輝かせています。今日、このよき日に、ただいま41名の卒業生のみなさんに卒業証書を授与致しました。64回生のみなさん、ご卒業まことにおめでとうございます。最後の証書番号が2768号となりますが、この数字には、この間の保護者の皆様や卒業生のみなさんを初めとして、学園を取り巻く多くの方々から小学校が、信頼され愛されてきた長い歴史と伝統が込められています。皆さんもその歴史や伝統の一人となるわけです。
みなさんは、今、一つの大きなことを終え、一つの大きな山を越え、これからの中学という一つの山を見定めて6年間の小学校生活を終ろうとしています。
本日はお忙しいところを、岡本理事長先生、小川法人事務局長様、中高中山校長先生にこの様な中をご臨席いただいていますが、本来であれば、学園理事、警察署署長様、消防書署長さま、幼稚園の園長先生や学園を支えて下さっている方々がたくさん、出席いただく予定でしたが、社会の状況の中でそれが叶わなくなりました。しかしながら、みなさんの卒業を祝う気持ちは変わるものではありません。きっとそれぞれの方がいろいろな形で、みなさんのことを思っていることでしょう。そして、出席する予定だった在校生も同じです。あの元気で感動的な呼びかけを聞けないのは残念ですが、きっと、ご家庭でそれぞれが皆さんにエールを送っていることと思います。
卒業生の皆さん、これから皆さんへのはなむけの言葉として、三つお話し致します。
一つ目は、矛盾の統一という言葉です。矛盾というのはつじつまが合わないことですね。それを一つにするということです。トキワ松の建学の精神である「鋼鉄に一輪のすみれの花を添えて」という言葉は、芯の強さに優しさを持った人にと言うものですが、硬い鋼と小さな菫の花は一見不釣り合いです。矛盾と言ってもいいでしょう。しかしながら、鋼のような心の強さと菫のような心の優しさ、それらを併せ持つことによって,言わば一つにすることによって、素晴らしい人格が完成するという精神がここにあるわけです。この言葉は、ある哲学という学問の一つの法則ですが、そこに一つの真実があるといってもいいと思います。これから皆さんが生きていく人生においても大なり小なりの矛盾、多種多様な矛盾と出合うことでしょう。そんな時に、それらとどう向き合っていくのか、自分とは一見相容れないこと、また、自分の考えと異質なものをどう取り込んでいくのか、あるいは一見違うもの同士を融合して新しい次元のものをどう作っていくのか、この矛盾をを統一した先にきっと新しい豊かな未来がある。自分とは統一していこうとする姿勢は、ものごとの真実を知るきっかけになると思いますし、必ずや自分を大きくしてくれるでしょう。
二つ目は、「量より質の転換」という考え方です。みなさんの中には例えば初めてさかあがりに立ち向かう時に、最初はなかなかできなかったのが、練習量を増やしていくうちにある時ふっとさかあがりができたという経験を持つ人もいるでしょう。縄跳びの二重飛びもそうです、何度も何度も繰り返すうちにある時急にできるようになったことがあるでしょう。これは量がたまってある水準になった時に質的な変化が起こったとも考えることができます。十分な量がたまらないうちは何も変化が起こらない。しかし、粘り強く、正しく努力を重ねていけば、ある時変化が起こる。ふっとできることがある。ふっとわかることがある。どうぞ、これからの生活の中で、この「量より質の転換」の考え方を忘れないでほしいと思います。
三つ目は、俳句のことです。この6年間の中でみなさんは世界で一番短い詩と言われている俳句を作ってきました。俳句を作ると言うことは、人の俳句を覚えたり、味わったりするよりもある意味、大変なことです。なぜなら、物をよく見、よく思い出し、自分の知っている言葉の中から表現しなければならないからです。言葉を換えて言えば、景色やものごとをなんとなく眺めている「日常の目」から、自分の言葉で「表現しようとする目」言わば、「俳句の目」になってきちんと見なければならないからです。今や俳句は今や世界50か国以上で作られていますが、日本の誇る伝統のある文化です。これから、みなさんが世界で活躍し、世界の人と交流する時にも日本の文化を身につけていると言うことは大事なことで、相手からも信頼される存在になると思われます。この小学校での俳句の経験は、少しオーバーに言えば、必ずや皆さんのこれからの「武器」になり、世界の人と交流するときに役に立つ時がくると思います。中学に言っても、何らかの形で俳句とも関わってほしいと思います。
最後に、保護者の皆さまに一言申し上げます。保護者の皆さまには、お子様の義務教育の六年間を無事に終えられ、今日の日を迎えになられましたこと、誠におめでとうございます。お子様たちはいよいよ中学生です。今までと違うご苦労なこともあろうかと思いますが、小学生の時とは違う距離感でお子様を温かく見守っていただきたいと思います。
この6年間、本校にいただきました深いご理解とご協力、ご支援に改めて、厚く御礼を申し上げるとともに、皆様のご多幸をお祈りいたします。
それでは、これをもちまして、私の式辞と致します。本日は誠におめでとうございます。
TEL 03-3713-8161(代) FAX 03-3713-8400